いつもの仲間内でのスカイプが終わって、彼女が風呂に行き、僕も眠る用意をしている12時過ぎだった。
抜けたばかりの会議通話に久しぶりに見る名前が追加された。懐かしい名前だったので思わずどうしたのかと問うと、ゲームのロビーに現れたので呼んでみたのだと言う。すぐに行くと言い残して、風呂のガラス戸越しに彼女にもそれを伝えると、うそ、すぐ上がる、と上擦った声で答えた。

夜の来訪者――名前はKとしよう、Kと僕と彼女は特に仲が良かった三人だった。三人とも歳が近かったし趣味も合った。特に僕とKは音楽の話がよく弾んだし(僕と彼女は音楽の趣味がまったく合わない)酒のことも話した(彼女はとんでもない下戸だ)。好意がなかったと言えば嘘になる。何よりKの声が好みだった。

あるとき僕はKと寝る夢を見た。目が覚めて隣にいたのはもちろんKではなく彼女で、夢見の悪い僕はまだ夢にいるのではないかと焦ったぐらいだった。

それまでそのフォーラムの中で、僕と彼女は同居していることを告げていなかった。僕はどちらでも構わなかったのだが、馴れ合っているように思われるのがいやだ、と彼女が言い張ったせいだ。だが、あるときいきなり、その事を皆に話そうと彼女が言い出した。彼女はKを含めた皆の前でそのことを告げた、まるで牽制のように。

僕はそれを思い出しながらおおよそ1年ぶりにKと話した。ずっと忙しくて、と笑うKの声は変わっていなかった。また遊びに来なよ、こっちが北海道へ行くのもいいよね、そしたら泊めてくれる? と笑う彼女の後姿を僕は見ていた。